AI Overview への露出比率を 6 → 41% に。FAQ 体系の再設計が起点。
ユーザー意図ごとの FAQ クラスタを構築し、JSON-LD と一次ソース表記を徹底。AI Overview に表示されるクエリ群の中で、自社引用比率が 6%→41% に伸長。
※ 掲載数値はモデルケースを含むサンプルです。実際の効果はお客様の現状・業界・取組み範囲により異なります。具体的な実績データは秘密保持契約締結後、個別相談にてご共有します。
課題:AI Overview に自社の説明が採用されない
個人向けの資産形成サービスを展開する、大手金融機関のケースです。制度や手続きに関する説明コンテンツを長年蓄積しており、記事数・被リンクともに十分な水準にありました。それでも AI Overview が表示されるクエリ群のうち、自社が引用される比率は 6% 前後に留まっていました。
同じクエリで引用されていたのは、記事数でも被リンクでも自社を下回る中小メディアです。社内では「量では負けていないのに、なぜ」という受け止め方をされていました。相談時点で検討されていた対策も、記事の追加制作でした。
金融は YMYL(Your Money or Your Life)領域にあたり、検索エンジンも生成エンジンも情報源の信頼性を厳しく評価します。記事量が引用に直結しない理由は、そこにありました。既存記事を 200 本ほど機械的な観点で読み直したところ、問題は次の 3 点に集約されました。
- 1 記事が複数の疑問をまとめて扱っており、どの質問への回答なのかが特定できない
- 制度の説明に出典が示されておらず、法令・公的資料との対応が追えない
- 執筆者情報が「編集部」表記に留まり、専門性を判断する手がかりが無い
1 点目は、読み物としての完成度が高いことが裏目に出た形です。制度の背景から手続きの流れまでを一本の記事で丁寧に説明していたため、人が読むには良い記事でした。一方で「いつまでに手続きすればよいか」という一点だけを知りたい質問に対して、引用すべき箇所が特定できない構造になっていました。
診断:どのクエリで、誰が引用されているか
着手前に、対象クエリの母集団と現状値を確定させました。ここを曖昧にしたまま進めると、あとから成果を説明できなくなります。
- Search Console で表示回数の多い順に 400 クエリを抽出し、そのうち AI Overview が表示される 180 件を対象母集団とする
- 180 件それぞれについて、AI Overview 内に自社ドメインが引用元として並んでいるかを確認する。着手時点の該当は 11 件(6.1%)
- 引用されている他社を記録し、記事の構造・出典表記・執筆者表記の 3 観点で自社との差を書き出す
- 月に 1 回、同じ 180 件を再確認する
他社との比較で最も差が出たのは出典表記でした。引用されていた中小メディアは、制度の説明ごとに金融庁や国税庁の該当ページへリンクしていました。自社の記事は監修体制も社内審査もあるぶん内容は正確でしたが、その正確さを外から確認する手がかりがページ上に置かれていませんでした。
施策:意図単位に割り直し、根拠と執筆者を明示する
記事を増やすのではなく、既存の記事を検索意図の単位に割り直すところから着手しました。ユーザーの疑問と意思決定の流れを明確にし、その流れに沿って情報を再配置する工程です。
- 1〜2 ヶ月目:コールセンターの問い合わせ履歴 3,000 件と検索クエリを突き合わせ、実際の疑問を 240 件に整理する
- 2〜4 ヶ月目:240 件を意図ごとのクラスタにまとめ、1 つの質問に 1 つの回答が対応する構造へ既存記事を分解・再編する
- 4〜5 ヶ月目:FAQPage の JSON-LD を本文と逐字一致で付与する
- 5〜6 ヶ月目:制度の記述に、根拠となる法令・公的資料の一次ソースを明記する
- 6 ヶ月目以降:執筆者・監修者を実在の個人として Person 構造化データで定義し、資格と経歴を紐づける
最後の工程は E-E-A-T の要件であると同時に、生成エンジンの実体認識にも効きます。author が文字列ではなく Person の実体として定義され、資格や所属と接続されていることで、engine 側が専門性を判断できる状態になります。
実務としていちばん重くなったのは、既存記事の分解でした。1 本の記事を 3〜5 本に割ると、URL が変わり、内部リンクも被リンクの受け皿も変わります。旧 URL からのリダイレクト設計、分割後の重複判定、どの記事を正典に据えるかの判断を、コンプライアンス部門の記事審査と並行して進める必要がありました。分解の対象は最終的に 60 本ほどに絞り、残りは構造だけを整えて本文には手を入れていません。
手をつけなかったこと
限られた期間で結果を出すために、あえて後回しにした領域があります。
- 新規記事の制作は 6 ヶ月間ゼロ。既存資産の構造化が終わるまでは、増やしても同じ問題を再生産するだけと判断した
- ページの表示速度やデザインの改修には触れていない。指標上の問題が無く、引用の可否に効く要素でもなかった
- 商品紹介ページの構造化は対象外とした。制度解説の側が引用されるようになってから、次の段階として着手している
結果:引用比率が 6% から 41% へ
再設計から一定期間の運用を経て、対象 180 クエリにおける自社の引用比率は 41% まで伸長しました。記事の総数はほぼ変えておらず、既存資産の構造を組み替えた結果です。
伸びたのは主に、記事を分解したクラスタに属するクエリでした。構造だけを整えて本文に手を入れなかった記事群でも引用は増えましたが、伸び幅は半分ほどです。分解の工数をどこに配分するかが、成果の大きさを左右したことになります。
コンテンツを増やす前に、既にあるコンテンツが機械から見てどう読めているかを確認する。YMYL 領域ではとくに、この順序が投資対効果を大きく左右します。
再現の条件
- 既に一定量の説明コンテンツが存在し、内容そのものの品質に問題が無い
- 記述の根拠となる公的資料・一次ソースを提示できる
- 実名で監修できる有資格者・専門家を立てられる
3 点目は妥協できません。監修者を立てられない場合、YMYL 領域では構造化データをいくら整えても引用比率は伸びにくく、無理に author を作ることは虚偽の構造化データとして逆効果になります。社内に有資格者がいる金融機関であれば、多くの場合これは体制の問題であって、人材の問題ではありません。
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